目次
テレワークの概要
テレワークとは、テレ(Tele) = 離れたところで、ワーク(Work) = 働く、をあわせた造語です。
政府の取組
政府の『世界最先端IT国家創造宣言』の重点項目となる「超少子高齢社会における諸課題の解決」の中で、テレワークの普及・促進が大きくとりあげられています。
「総務省」「厚生労働省」「経済産業省」「国土交通省」の4省を中心に積極的な活動が進められており、テレワークの一斉実施を呼びかける国民運動「テレワークデイズ」や、11月を象徴月間としてテレワークを普及推進する「テレワーク月間」なども実施されています。


テレワークの3つの区分
テレワークには、働く場所によって、大きく3つの区分があります。



テレワークの効果
政府がテレワークの導入を積極的に進めている理由は、現在の超少子高齢社会に対応するためには、先進的企業がテレワーク導入で得た、下記のような効果が日本の企業全体に必要だからです。
企業が感じる効果

- 優秀な人材の確保や、育児・介護などによる離職防止につながった。
- 企業風土の変革、業務改善やペーパーレス化の機会となった。
- 迅速で丁寧な対応ができ、顧客満足度の向上につながった。
- 意図的な社内コミュニケーションが増え連携強化につながった。
- 自律的・自己管理的な人材の育成環境ができた。
- 目標と成果に対する意識が高まった。
- 通勤費、電力やフリーアドレスなどオフィス維持費を削減できた。
- 時間に余裕ができたことで、従業員の労働意欲が高まり労働力の創造につながった。
- 障がい者雇用を、通勤の負担がなくさまざまな地域から雇用できるようになった。
- 非常時の事業継続体制の整備ができた。
- 従業員のワークエンゲージメントが高まった。
- 企業のブランドやイメージを向上させることができた。
従業員が感じる効果

- 家族と過ごす時間や趣味の時間が増え幸福感も高まった。
- 移動時間が減ったことで心にも余裕ができた。
- 業務に集中できるので効率がよくなった。
- 自律的に仕事を進められるようになった。
- 目標や成果、業務プロセスが見える化され納得感が増した。
- コミュニケーションを取れる相手や頻度が増し信頼感も強くなった。
- 睡眠を十分に取ることができ集中力がアップした。
- 自己啓発の時間が増えてスキルアップに繋がった。
- 会社に対する満足度が上がり、貢献意欲も高くなった。
社会への効果
社会にとっても「通勤混雑の緩和」「労働生産性の向上」「労働力の確保」「医療費の削減」「環境負荷の軽減」などの効果が期待されています。
テレワークの導入状況と中小企業
テレワークの導入状況
総務省の「2018年通信利用動向調査」によると日本のテレワーク導入率は19.1%となっています。

商工中金が2017年に実施した「中小企業の「働き方改革」に関する調査(2017年1月調査)」では、中小企業の在宅勤務の導入率は3.6%という結果でした。
テレワーク導入は特に中小企業の経営課題(『営業・販売力の強化』『人材の確保・育成』『販売価格引き上げ、コスト削減』)への貢献度が大きいと考えられており、他の施策よりもまず先に手をつけていくべきでしょう。

VS COVID-19
東京商工リサーチのインターネットアンケート調査( 2020年3月2日~8日に実施 )によると、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために在宅勤務を実施した企業は、大企業33.7%、中小企業14.1%(全体では17.69%※1万5,597社中2,759社)でした。
2020年6月21日(全国の1万128人にインターネットで意識や行動の変化を調査)
内閣府の発表によると、テレワークを何らかの形で実施した人は全国で34.6%、東京23区では55.5%に上った。通勤時間は東京23区で56%が「減少した」と答え、回答者の72.7%が「今後も保ちたい」と答えた。
また、テレワーク実施者の64.2%が「仕事より生活重視に変化した」と回答。「地方移住への関心が高まった」と回答したのは、テレワーク実施者の24.5%、東京23区に住む20代では35.4%に上った。
テレワーク導入の重要な4つのポイント
中小企業がテレワーク導入を成功させるためのポイントとして、
- 経営者が導入チームを強く後押しする。
- 業務プロセスや評価方法を見直す。
- 費用を抑えたツールの組み合わせと限定適用によりスタートする。
- 全社展開を想定しながら進める。
の4つは必ず押さえておきましょう。

経営者の強いリーダーシップはとても重要です。
導入計画時だけではなく、稼働後に新しい仕組みを定着させ、組織風土を変えていくのは経営者の重要な役割です。
業務プロセスをテレワーク導入を機会として見直すことができます。また、評価指標についてもしっかりと検討しておくことで目標と成果の見える化ができるようになります。
業務プロセスの見直しは、就業規則や各種社内規定類、そして情報セキュリティ対策や取引先との機密保持契約書の内容なども含めて確認し、必要に応じて変更していきます。
このとき、試験的な導入だけではなく全社展開も想定しながら進めていくことが、スムーズな拡大につながります。
まずは、お金のあまり掛からない方法でスタートし、削減されたコストから次展開の投資をするのも、導入効果が分かりやすくなりモチベーションの維持につながります。
試験的に対象者を限定して導入し、「対象者」「対象業務」「実施頻度」をそれぞれ状況を見ながら拡大していきます。
中小企業のためのテレワーク構成
中小企業がテレワークを導入する初段階として、下記のような構成から検討を始めてみましょう。

対象業務について
- 資料の作成や管理(企画書、報告書、議事録等)
- 情報収集や整理(Webサイトや、社内資料まとめ等)
- 業務知識等の学習(e-learning、資料配布等)
- クリエイティブワーク(デザイン、システム開発等)
- システム運用・保守業務
- 上司や同僚、顧客先や取引先などとの連絡・調整
- 社内申請、承認などの意思決定
- 社内関係者との会議
対象者について
- 育児・介護・自らの傷病など時間制約のある従業員
- 既に裁量労働やみなし労働制の対象となっている従業員

評価指標について

量的評価
- 移動コスト:移動時間・交通費
- 情報処理力:データ処理数、デザイン・プログラムの作成件数、問い合わせ対応の処理数・応答時間
- 生産性:売上、利益額
- オフィスコスト:賃貸料、オフィス面積、電気代、コピー費用
- ITコスト:PC、タブレット等情報機器コスト、ネットワークコスト、クラウド等各種サービスコスト
- 情報セキュリティ:問い合わせ数、インシデント発生数
- 人材採用と維持:新規採用の応募者数・質、離職者数、テレワーク利用者・応募者数
質的評価
- 生活の質:家族生活(育児・介護等)、個人生活(自己啓発等)、社会生活(地域活動等)、健康の維持(睡眠時間等)
- 仕事の質:顧客満足度、業務改革、上司・同僚・部下とのコミュニケーション
- 働き方の質:会社に対する満足度、仕事に対する満足度、ワーク・ライフ・バランスの実現
- 企業ブランド:企業イメージ、企業へのロイヤリティ
労務管理について

社会保険労務士などの専門家に事前に相談することが望ましいですが、下記については特に注意が必要です。
通常の労働時間制度の従業員
- コミュニケーションツールなどにより従業員の労働時間を適正に把握する責務があります。
- いわゆる中抜け時間については休憩時間や時間単位の年次有給休暇として取扱うことが可能です。
- 朝の始業時間を遅くしたり、中抜けの時間補填として終業時間を遅くしたりするなどの所定労働時間の変更については、あらかじめ就業規則に規定しておくことが必要です。企業が所定労働時間を一方的に変更することはできません。
- 終業場所としてテレワークをする場所(自宅など)を就業規則に明示する必要があります。
すべての従業員
- テレワークを行う端末や作業場に対して厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の基準に沿った作業環境が望まれます。
- テレワークを行うことによって生じる費用について、労使どちらが負担するかについて就業規則等に定めておくことが望まれます。
- 自宅などテレワーク先での怪我であっても労災保険給付の対象となります。
※法的に就業規則の作成の義務がない会社であっても、就業規則に準ずるものを作成したり、労使協定を結んだりすることが望ましいとされています。
テレワークツールの組み合わせについて
働く場所(在宅勤務、施設利用共用型or専用型 、モバイルワークなど)や業務内容によりツールを適切に組み合わせることが、テレワーク導入の成果アップにつながります。

情報セキュリティ対策について
従来の対策に追加検討が必要な項目として、下記のようなものがあります。
- 作業場所、利用ツール、情報の持ち出し増加などに起因する技術的な対応
- 従業員の情報セキュリティリテラシーの向上
- 盗難やのぞき見などへの物理的な対応

企業の「情報セキュリティポリシー」が、テレワークツールの組み合わせを検討する際のベースとなりますので、未整備の場合はこの機会に策定しましょう。
公的支援策について
テレワーク導入に向けて公的支援を利用できる場合があります。
厚生労働省や経済産業省などから支援制度が発表されていますので、随時詳細を確認し活用していきましょう。
(例)
時間外労働等改善助成金(テレワークコース)
- テレワーク導入時に必要な通信機器の導入・運用
- 終業規則、労使協定等の作成・変更
- 労務管理担当者や労働者に対する研修
- 外部専門家によるコンサルティング
(例)
IT導入補助金
- ITツール導入よる業務効率化
- 在宅勤務制度を新たに導入するため、業務効率化ツールと共にテレワークツールを活用

テレワーク制度定着のために
テレワーク導入効果を最大化し持続させていくためには、テレワークを企業文化として根付かせていく必要があります。
導入成果の社内発表、テレワーク利用促進のための「テレワーク・デイ」などのイベント開催や、トップからのメッセージ発信など継続的な施策を実施し従業員の意識を変えていきましょう。

