DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが進まない原因とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが進まない原因とは

新型コロナ禍の影響もあり、ここ2年で「次の10年間の社会の姿」が決まるとも言われています。また、近年のデジタル化の波を受け、変革に取り組んでいる企業は少なくありませんが、その多くは思い通りに改革が進んでいません。

どうして、DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが失敗するのか?重要なDXプロジェクトが止まってしまう、その大きな落とし穴について考察します。


DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か

そもそも、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何なのでしょうか? 「DXを成功させる」ためには「DX」の認識を確認する必要があります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の提唱

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。
そこでは、以下のような概念であると定義されています。

「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」

DX(デジタルトランスフォーメーション)に至るまでの3つのフェーズ
エリック・ストルターマン教授は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に至るまでの変化を次の3つの段階に区分しています。

第1段階:IT利用による業務プロセスの強化
第2段階:ITによる業務の置き換え
第3段階:業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態
DX(デジタルトランスフォーメーション)はこの第3段階の状態のことをいう

経済産業省のDX(デジタルトランスフォーメーション)定義

経済産業省は、2019年7月の「「DX推進指標」とそのガイダンス」で、DX(デジタルトランスフォーメーション)を以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」


DX(デジタルトランスフォーメーション)の落とし穴

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義の解釈

エリック・ストルターマン教授は

「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」

経済産業省は

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

これらの定義の解釈がとても難しく、人により理解が異なることからプロジェクトの失敗へ繋がっていると考えられれます。

エリック・ストルターマン教授の定義の解釈

エリック・ストルターマン教授が提唱した概念には、DX(デジタルトランスフォーメーション)に至るまでに3つの段階がありました。

第1段階は、「IT利用による業務プロセスの強化」で、
それは、企業がビジネスを進めていく中でベストプラクティスとなった業務プロセスがあり、マニュアルなどを使って標準化と実施の徹底を進めていくが、完全に業務プロセスを守らせることは難しい。そこで、標準化したい重要な業務プロセスをIT化しそれを従業員に使用させることで、業務の効率や品質を維持するというものです。

第2段階は「ITによる業務の置き換え」で、
重要な業務プロセスの強化には成功したが、人間が働くことによって労働時間や安全上の問題、人的ミスなどが発生してしまう。そこでベストプラクティスとなっている業務プロセスはそのままに、ITに人間の代替をさせるというのがこの段階です。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の利用などもこの段階に適用できます。

第3段階が「業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態」で、
この段階がDX(デジタルトランスフォーメーション)となります。
IoTなどによって構築されていく膨大なビックデータは、人手では整理も解釈もできなくなっていきますので、AIを活用する事が必要になります。またITの浸透や高速化により距離や時間など既存の概念が変わっていくと、評価される価値も変化していきます。既存のビジネスモデルが実施されている中で収集されたデータを分析し、環境の変化を捉えて新しいビジネスモデルを創出する、そしてまたデータを収集し新しいビジネスモデルが創り出されるという状態です。
この段階が、第1,2段階と異なる重要なポイントは、ビジネスモデルそのものがITやデータ活用によって創り出されているということです。

経済産業省の定義の解釈

経済産業省は「「DX推進指標」とそのガイダンス」で、DX(デジタルトランスフォーメーション)を以下のように定義していました。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

ここからキーワードだけを抽出してみると

「環境変化に対応」して「データとデジタル技術を活用」して「ビジネスモデルを変革」

とエリック・ストルターマン教授の第3段階目と、ほぼ同じになります。


DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを成功させる一歩目

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、従来からよく使われてきた、IT化、デジタル化、デジタライゼーションとは違います。また、単にRPAやIoT、AIを導入するだけではDXとは言えません。

さらには、IT化、デジタル化、デジタライゼーションやRPA、IoT、AIを導入していくと、将来的にDXが実現できるという訳でもありません。

従来のビジネスモデルを強化するのではなく、データやデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルを創出していくことが、DX(デジタルトランスフォーメーション)であるという認識を持つ、それがプロジェクト成功への第一歩です。

中小企業にとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)